top of page

「はいいろの せかい」

 灰色の世界

語り・大古優作

Anchor 4

ここには はいいろのそらと、はいいろのじめんが ひろがっています。

「おとうさん?」

おきあがった おとこのこは そういって まわりを みわたしました。

すると、とおくから わらいごえが きこえてきます。

「こんにちは、あははっ」
おとこのこ よりも

すこしちいさい おんなのこが

キラキラした えがおで いいます。
「こんにちは」

あいさつを かえすと、おんなのこは

キラキラしながら いいました。
「ヨコちゃんたち いがいにも いるなんてビックリしちゃったわ」
「ヨコちゃん?」
「そうよ。ねえ、いくところがないなら

いっしょに いきましょうよ。こっち」

おへんじも またずに すすむ おんなのこに ついていくと、

そこには さんにん いました。
おおきい おとこのひとが たどたどしく いいました。
「いち、ごう」
「あはは、イチゴちゃんだよ」
おんなのこが そう つけたします。
つぎは ちいさい おとこのひとが いいました。
「ワタクシはニコと もうします」
つぎは ほそい おんなのひとが いいました。
「わたしはサンゴって なまえよ。

でもね、ほんとうは さんごうっていうの、へんな なまえでしょう?

へんだから みんなヨコちゃんにニックネームを つけてもらったのよ。

ヨコちゃんっていうのは あなたを つれてきた おんなのこの なまえ」
さいごにヨコちゃんという おんなのこが いいました。
「あなたは ごばんめに みつかったから、ごごうくん ね。

でもゴゴウじゃ へんだから、ココくんに しましょう」

おとこのこは うれしくなりました。

「ココって なまえを ありがとう。

なにも おぼえていなかったから、うれしいよ。

ところで ほかに ひとは いないの?」

ココいがいの ぜんいんが くびを よこに ふりました。

 

「ヨコちゃんたち いがいには まだ あえていないの。

だれも なにも おぼえていなくて。

でも、みんなで ここで くらしていれば

そのうちに なんとかなると おもうんだ。

ココちゃん、みんなと いっしょに くらそう?」

ココはすこしだけ かんがえて、くびを よこに ふりました。


 

「ぼくには かぞくが いたような きがする。

だから、さがしにいくよ」
「えっ」
「イチゴ、ニコ、サンゴ、ヨコ、また あおうね」
あるきはじめたココに、ヨコは うしろから いいます。
「いかないで、ココ。いっしょに いようよ」
ないてしまったヨコの かたを、イチゴが そっと なでました。

「ついて、いこう?」
イチゴがゆっくりと いうと、サンゴも いいました。
「イチゴの いうとおりだわ。

わたしたちがココと いっしょに いけばいいのよ。

ほかのひととも いっしょに いられるように なるかも しれないわ。

ねえニコも そう おもわない?」

 


 

「ワタクシはサンゴと

ともに いられれば まんぞく です」
ふかぶかと おじぎを しながら、

ニコはサンゴの てにキスを しました。

 

 

 

 

ヨコはココをみつけた ときの

キラキラの えがおで みんなに いいます。
「みんな いそいで、ココを おいかけよう」
 

イチゴもニコもサンゴも、

キラキラのえがおで うなずきました。

はいいろのそらと、はいいろのじめんを、みんなは すすみました。

じぶんの たいせつなものを さがすために、すすみました。


 

それから ずっと ときが たって、ごにんは うごかなく なりました。
でんちが きれた にんぎょうは うごかなくなりました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おしまい

bottom of page