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「つたわるおいしさ」

 伝わる美味しさ

語り:米盛 和雄

Anchor 5

いつも おりる えきから、すこし はなれた ところに

コーヒーショップが ありました。

はたらいて いるのは、かみのけがトウモロコシみたいな

おにいさんが ひとり。

たまたま しごとに いく とちゅうに あったので、

もちかえりでコーヒーを かってみました。

「ありガト、イーテらっしゃい」

ききなれない いいかたに ちょっとおもしろくなって えがおで、

「いってきます」

と おへんじを しました。

 

あるきながら かったコーヒーを のむと、

いままで のんだなかで いちばん おいしいと かんじました。

 

ちょっと いいきぶんの おかげで

いつもより やさしい きもちに なって、おなじ しごとを する ひとの

ちょっと こまったことを たすけたり、

おやつを わけて あげたり しました。

いいことを された ひとたちは、

おなじように ちょっとだけ いいことを していました。

よくじつも おいしいコーヒーに いいきぶんを もらって

しごとへ いきます。

りょうて いっぱいに にもつを もった ひとが

エレベーターの のぼるボタンを おせなくて こまっていたので、

ちょっと てを のばして のぼるボタンを おしました。

「ありがとう」

「いいえ、いきさきは なんがい ですか? かわりに おしますよ」

「いちばん うえのかいを おねがいします」

「あら、わたしと いっしょですね。

よかったら にもつを すこし もちましょうか?」

「それは とても たすかります。

では いちばん ちいさい にもつを おねがいします」

ふたりはニコニコして、いっしょに にもつを はこびました。

その つぎのひも、その つぎのひも、

おみせが やっている ときはコーヒーショップに いきました。

「きょうも ありガト、イーテらっしゃい」

 

 

おしまい

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