top of page

「よる」

語り:白石 陽子

1407yoru

おんなのこは よるが きらいです。

おとうさんと おかあさんに おやすみなさいと いったら、

でんきが きえて まっくらに なるからです。

いつものように おかあさんは 

おんなのこをベッドに ねかせて いいました。

「おやすみ」

おんなのこはベッドから おかあさんを みて、

「わたしは おやすみなさいを いいたくない」

といいました。

「くらくなったら こわいわ。

わたしは くらいところが きらいなの。

どうして よるは くらいの?

ずっと あさで、ずっと ひるなら いいのに」

おかあさんは おんなのこの ほっぺにキスをします。

「どうして くらいのが こわいの?」

「みえないから だわ。

へやのなかも、そとも、わたしも」

「本当にそうかしら? ほら、まどの そとを みて?」

おかあさんがカーテンを あけると、

まどの むこうに よるが みえました。

「こわいわ」

おんなのこが そういうと、おかあさんは ききました。

 

「なにが みえる?」

「おとなりさんの にわ、どうろ、

それに まっくらなそら」

「あら、そらは ほんとうに まっくらかしら?

よーく みてごらんなさい」

まどの そとには まっくらなそら だけではありません。

とおくで またたく ひかりが ありました。

「あれは なに? いつもは なかったわ」

おんなのこが いうと、おかあさんは わらいます。

「あれは おほしさま。

いつも よるになると そらで ひかりはじめるのよ」

おんなのこは うれしそうにいいました。
「こんど、わたしが おとうさんに おしえてあげる」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おんなのこは よるが すきになりました。
 

おしまい。

bottom of page