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「しろいうさぎと くろいうさぎ」

白いうさぎと黒いうさぎ

 

Anchor 2

文:ナウス・リー

絵:とりのささみ

語り:crisu

あるもりに、がんばりやさんの しろいウサギさん が

すんでいました。
しろいウサギさんのいえのちかくには、

ひにくやの くろいウサギさんがすんでいました。

しろいウサギさんは、はたけいっぱいに

にんじんをつくっています。

まいにちまいにち、おいしくなってくれるように

おせわをしています

そして、くろいウサギさんは、

しろいウサギさんのつくった にんじんをみて、

こういいます。

「いつもおなじことをしていて、あきないのか?

しろいうさぎは、たいくつなやつだ!

 

きっと、にんじんも

たいくつな あじがするんだろう!」

けれども、しろいウサギさんは

なにもいいません。

 

おいしいにんじんを つくるために、

まいにちまいにち

がんばりつづけました。

あるひ、しろいウサギさんのいえのまえを、

ウサギのおうさまが、たまたまとおりかかりました。 
 

たくさんのけらいをひきつれていたので、

さすがのしろいウサギさんも すこしおどろきました。

 

おなかのすいた おうさまは、

しろいウサギさんのつくったにんじんをみかけると

ひとつかいとりました。


おうさまは さっそくひとくち ぱくっとたべます。

「こんなに おいしいにんじんは

 たべたことがない!」

おうさまは

さらにもうひとつ、

もうふたつと かいとります。

このあじを みんなに

しってほしいとおもった

おうさまは、

けらいぜんいんのぶんを

かいとり、

みんなにあげました。

けらいも みんな だいまんぞくでした。

するとそこに、なにもしらない くろいウサギさんが、

いつものように こっそりと はたけにはいってきました。

「いつみても、おなじ にんじんばかり!

きっと、あじも たいしたことないんだ!

こんな にんじん、むしのえさにも ならないさ!」
 

そのことばをきいた おうさまは、

かおをまっかにして おこります。
「こんなにも すばらしい にんじんに、

なんてひどい ことばをかけるのだ!

あのものをとらえよ!」
 

おうさまのめいれいで くろいウサギさんは、

あっというまに つかまってしまいました。

「おまえのような わるいウサギは、

キツネにたべさせてやる!

「あの、ぼくを どうするつもりでしょうか……?」

くろいウサギさんは こわくて からだをふるわせます。
「それだけは、ゆるしてください!」
「ゆるさん! このものを つれていけ!」
「そ、そんなぁ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


くろいウサギさんは あきらめかけました。
しかしそこに、

しろいウサギさんが はいりこんできたのです。

「おうさま、どうか くろいウサギさんを

みのがしてあげてください。わたしのともだちなのです」

しろいウサギさんの たのみでは、

さすがのおうさまもことわれません。
 

くろいウサギさんを かいほうしてあげると、

おうさまたちは さっていきました。


「どうして たすけてくれたの?」


「にんじんがおいしくなったのはくろいウサギさんのおかげです。

わるいことばにまけないように つよくそだってくれたからです。

だから、その おれいに たすけてあげました」

しろいウサギさんの こころのひろさに、

くろいウサギさんはかんどうしました。

どうじに、じぶんがしてきた、いままでのことを

はずかしくおもいました。

それからは こころを いれかえて、

いっしょに にんじんをつくりはじめました。

すこしでも おんをかえせるように がんばりました。
 

そこで、くろいウサギさんは きづきました。

まいにちおなじことを くりかえしていたと おもっていたのですが、ちがっていたのです。

にんじんづくりには、たくさんのさぎょうがあって

じっさいにやってみないと わからないことで いっぱいでした。


くろいウサギさんは すこしずつおぼえながら

がんばっていきました。

おおきな おおきな、

にんじんのかたちをした

トロフィーをいただきました。


しろいウサギさんは

たいへんよろこびました。
 

そして、くろいウサギさんに

いうのです。

ときがたち、

しろいウサギさんのにんじんが

くにいちばんのにんじん だと、

ひょうしょうされました。

「これは ふたりでがんばったあかしです。

くろいウサギさん、ありがとう!」
くろいウサギさんは ふたたびかんどうしました。

くろいウサギさんは

しろいウサギさんにかんしゃをしながら

なみだをながして、ひっしにいいました。
 

「ありがとう。

たくさんのしあわせをもらいました。ありがとう」

そして、しろいウサギさんにリボンをわたして

こういいました。


「ぼくと、けっこんしましょう」
しろいウサギさんは こころよくうけとりました。
にひきは とてもしあわせそうに わらいました

それからも、にひきは にんじんと

おたがいのことをかんがえながら がんばりました。
まいにちまいにち、しあわせにくらしました。

 

 おしまい。

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